2基のエレベーターと、歩くだけでもヒザがやられそうなマダム
私の働くビルの受付のヨコには、2基のエレベーターがある。
そのエレベーターはとても古く、時々止まったり、人を閉じ込めたりする。
例によってある朝、右のエレベーターが1階で止まった。
ただ、扉が開く。
扉が開いて、中に入って、階数ボタンを押して、扉が閉まる、でも上にも下にも行かないという状態だが、開くボタンで開く。
左のエレベーターは普通に動く。
だがしかし、1階から上に行こうと▲ボタン(2基共通)を押すと、右の動かないエレベーターが反応して扉を開けるのである。
上がりも下がりもしないくせに。
それでも時々、左のエレベーターは勝手に1階まで下りてくるので、そのタイミングなら乗れますよ、と受付係の私は案内していた。
そこへ、歩くだけでもヒザがやられそうなマダムがやってくる。
私は同じ説明をした。
これまでは全員が階段へ向かったが、マダムは違った。
上へ行きたいはずのマダムは、黙って▼ボタンを押した。
左のエレベーターが魔法のようにすんなりやってくる。
「これで、中に入って階数ボタンを押せばいけるわよ」
壊れた右のエレベーターが▲行きで反応してる間に▼を押せば、正常な左のエレベーターの方が反応して1階までやってくるワケだ。
「ほらね?」
満足気な微笑みを残し、マダムは上へ上がっていった。
「エレベーターの乗りたさが違う・・・」と思った。
はい、おやすむ!